3匹のシベリアン・ハスキー

 俺の飼っている3匹のシベリアン・ハスキーを紹介しようと思う。まず一番でかいのがグリーン、名前の理由は俺が緑が好きだから。そんで二匹目がバイオレット、こいつは耳が凄く良いんだけど、そのかわり凄く神経質なんだ。三匹目がグレイ、呆れ果てるくらい馬鹿なんだが、どうにも嫌いになれないんだ。

 こいつら三匹を飼いならすのは容易な事じゃない。まず注意してほしいのは、こいつらは人間に飼い慣らされようなんてこれっぽっちも考えてないって事。毎日何もしないでも満足な量の餌が食えて、暖かい毛布で寝られる環境が揃ってたって、こいつらにはそんな事どうだっていいのさ、こいつらが求めてるのはたった一つ、野生でいる事なんだ。こいつらは確かに今は首輪を付けられて、大人しくしているように見えるが、その瞳の奥には狼だった頃の名残が強く残ってる。厳冬の大地を駆け抜け、死肉を貪り、夜中に遠く吠えていた頃の記憶がな。でもな、俺はこいつらを野生に帰す訳にはいかないんだ、理由はお前にもきっとわかってるはずだぜ?

 大体朝になるとグレイが馬鹿みたいに大きな声で吠え始める。まだお日様も昇ってないってのに、こいつは新しい獲物が欲しくて仕方ないんだ。それにつられてバイオレットとグリーンも目を覚ます。朝からドアをガリガリ引っ掻くもんだから、うるさくてたまったもんじゃない。だから俺は玄関のドアを開けて、三匹をいっぺん外に出してやるんだ。そうしてまたしばらくの眠りにつくって寸法さ。

 散歩だって大変だ、だいたい毎日決まったルートってのがあるんだけど、そのルートは俺が一人で歩けばまぁ一時間もしないで歩けちまう距離なんだよね、でも三匹を連れてるとなかなかそういうわけにもいかない。考えてもみてほしい、三匹の犬がいっぺんに野いちごだとかネズミだとかスズメだとかを追いかけ回したり、それぞれが思い思いに立ち止まってションベンを始めたり、突然喧嘩を始めたりする光景を。そんなカオスを俺は毎日毎日繰り返している。自分でも嫌になる時があるよ。

 さぁ、クタクタになって眠ろうと思うと今度はバイオレットがいつまで経っても眠らない。ちょっとの物音で目を覚ましては部屋中を駆け回って、花瓶を倒したり、グリーンに喧嘩を売ったりするんだ。俺は一時期ノイローゼになりかけて、バイオレットに睡眠薬でも飲ませてやろうかと本気で考えた時期もあったくらいだ。でもあいつも最近年を取って落ち着いたのか、昔程は夜ふかししなくなったかな。

 あー、他にも色々書きたい事があるんだけど、どうもグリーンが遊んでほしいみたいで、俺はそっちに行くことにするよ、グリーンはいかんせん寂しがり屋なんだ。また何かあったら気軽にコメントしてくれ。