2018-01-01から1年間の記事一覧

君はかつて少女だった

僕はバーテンダーをしている。 賑やかな駅前から少し離れたオフィス街の中にある小さなバーで。 BGMはジャズ、特にこだわりがあるわけではない、オーナーの方針なのだ。 忙しいお店ではないけれど、特別暇なわけでもない。 いろんな人がやって来て、酒を飲み…

不安で目が覚める

ここ数週間、すっきり目が覚めた事がない。起きようと思った時間の3時間くらい前に目が覚める。胃袋を誰かに握りしめられてるみたいなきりきりした感情が深い夢の間からこぼれ出てきて、気がつくと目が覚めている。その感情に不安という名前をつけるのは簡…

晴れの日の不思議

ここのところずっと僕の心の中で澱のように沈殿している暗いムード。癒えることのない過去の傷の痛みとか、どうしようもない虚無感とか、何もやる気が出ない感じとか。部屋も汚れていくばかりだし、読みたい本も読んでない、会いたい友達にも会ってないし、…

何もかも嫌になるときがある

何もかも上手くいかないときがある。 その度に1人で本を読んで、音楽を聴いて、映画を観て、内側の世界を几帳面に作り直して、乗り越えてきた。 それでも時々、プールの水を一気に抜いたような悲しみがやってくる。 わかっている、世界はそういうサイクルで…

秋はセンチメンタル

あんなに元気に鳴いていたセミたちはもういなくなってしまった。燃え盛る太陽の光を浴びて青々と茂った草木や花たちも、もうじき何かの役目を終えたかのように枯れていってしまうだろう。お気に入りのTシャツやサングラスや短パンももう着れなくなる。花火は…

脳内実況タイプ ー幸せについてー

日曜日の昼過ぎ、今日は一日何も予定が無い。特に書きたいことがあるわけでは無いけれどこうしてパタパタとタイプを続けるのは、自分がどこかとつながっている実感がほしいからなのか、単なる自己顕示欲からなのか、承認欲求からなのか。自分の心のありかた…

たまらなく絶望してる君への殴り書き

やぁ、久しぶりだね、こんな風に君と話をするのは。元気だったかい?僕は相変わらずってとこかな、ブロンだって全然やめてないし、死にたくなる日なんてしょっちゅうあるよ。で、今日は何の用かって?いや、特にこれと言って特別な用事があるわけじゃないん…

どろぼう

ある晴れた日の昼下がり 君は突然姿を見せた やあこんにちは 私はどろぼう にっこり笑いそう言った 疑う余地もないほどに 君は確かなどろぼうだった するりと僕の 鍵を開けると 全てを奪い去っていった ねえあのときのどろぼうさん 君は一体どこにいるのか …

夏の終わりの短い夢

僕はピアノの音に耳をすませていた。西日の差し込む部屋に、君がぎこちなく弾くピアノの音が静かに染み渡っていった。僕はソファに横になり、いくつもの音が浮かんでは消えていく様子を頭に思い浮かべた。僕の頭の中で何かざわざわした感触があった。僕は遠…

ありふれた失恋の話

気まずい沈黙の間で、周りのテーブルの賑やかな音が行き場を失くして消えた。 君の飲むグレープフルーツジュースの氷がカラカラと音を立てて崩れた。 食事を終えた僕は黙って君の後ろにある大きな窓の外を眺めていた。 季節は冬で、街にはいたるところにイル…

シャンペイン・スーパーノヴァ

君はあのクレイジーな体験のあと、無事に日常生活に戻ってきた。以前と何ら変わりない、ありふれた日常だった。決まった時間に起き、シャワーを浴び、髭を剃り、服を着替えて、満員電車に乗り込む。世界は君がいてもいなくてもお構いなしであるかのように移…

シェイク・マリファナ・シェイク

起きてください、大丈夫ですか?あなたはどこから来たのですか? 2017年5月某日、雨季を目前に控えたラオス山間部の小さな町###。町をゆくのはヒッピーの面影を残す欧米人バックパッカー達、セルフィースティックとブランド服で身を固めた韓国人旅行者達。一…