夜衝

奇妙なドライブだった。言い出しっぺはコウヘイで、最初は彼女のミホと二人で海にでも行こうという話をしていたらしいのだが、何故か車には俺とリナも一緒に乗っていた。運転席のコウヘイはノリノリで、さっきからエルレガーデンとかマキシマムザホルモンの…

3匹のシベリアン・ハスキー

俺の飼っている3匹のシベリアン・ハスキーを紹介しようと思う。まず一番でかいのがグリーン、名前の理由は俺が緑が好きだから。そんで二匹目がバイオレット、こいつは耳が凄く良いんだけど、そのかわり凄く神経質なんだ。三匹目がグレイ、呆れ果てるくらい馬…

ボルチモア

「またお前か、何しに来たんだ?ここはお前の来るところじゃねぇんだよ。ここにはお前が欲しがってるようなもんは何も無い、薬も、女も、金も、なんにもねぇよ。わかったらさっさと消えてくれ。俺はもううんざりしてんだよ、お前がここに来てはラリってわけ…

サンディエゴ

”あなたに見えている物が私には見えないし、あなたに聴こえている事が私には聴こえないの。それと同時に、私に見えている物があなたに見えてなくて、私に聴こえている事があなたに聴こえていないんだって事も私は知っているわ。私達は同じ世界に生きて、同じ…

シカゴ

君が煙草の灰を落とす指の動きが、どことなくぎこちない事に気がついてしまったせいで、僕は君に悪い事をしているような気分になった。君にしたって、僕の前でそんなぎこちなさを演じるつもりはさらさらなかったに違いない。僕に気取られた事に気がついた君…

金魚中毒

こんなところに<金魚屋>があったなんて、わたしは全く知らなかった。 わたしはこの街にやってきてもう20年になる。 職場に向かう途中にあるこのうらびれたシャッター街を、わたしは毎日のように通る。 しかし、<金魚屋>の事は全く知らなかった。 こんな…

音楽の薬局 夏の処方箋

お薬の説明書 本日、調剤したお薬は以下の通りです。 Milton Nascimento - Ponta de Areia Yogee New Waves - Climax Night Calvin Harris - Slide(feat.Frank Ocean, Migos) Stan Getz & Joao Gilberto & Antonio Carlos Jobim - Desafinado Ebo Taylor & U…

ADHD(いつもめちゃくちゃでとっ散らかっていて憎たらしいけど離れられない僕の脳みそが普段どのように僕の意思と認知を規定しているか)と、自己再発見へのささやかな試みについて

買い物編 18時の待ち合わせ編 ブログ更新編 自己再発見(あるいは自立)へのささやかな試み 買い物編 そろそろお腹も空いたし夕飯の買い物に行かなければならない。何を食べようか。そういえば朝食用のバナナとヨーグルトはもう無くなってしまっていたはずだ…

スネイク・ハント

"走っても疾(はや)過ぎることなく、また遅れることもなく 「世間における一切のものは虚妄である」と知っている修行者は、 この世とかの世とをともに捨て去る。 ――蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。" - ブッダ 骨董品のような扇風機と27歳の…

We (don't) know what we've got.

僕の父の父は僕が小学校四年生の時に死んだ。悪化した肺がんが心臓にまで侵食してきて、最後は相当な苦痛の中死んでいったらしい。「煙草が吸いたいわけじゃない、煙草をつける火が見たいだけなんだ」そう言いながら父の父はいつも煙草を吸っていた。「火が…

<そうめん屋>と髑髏の話

わたしはこの季節になると<そうめん屋>の事をよく思い出す。わたしが幼かった頃、<そうめん屋>は毎日決まった時間にやってきてはそうめんを売っていた。 ”おいしいそうめんあります” それが<そうめん屋>の出していた唯一の看板だった。 几帳面な学者*1…

【PR】広告をスキップ

この広告は90日以上更新の無いブログに表示されます。 広告が全く目に入らない世界、想像できますか?現実離れしたモデル達が宣伝するハイブランドのポスター、老後や病気の不安を煽る生命保険や健康食品のコマーシャル、印象に残れば炎上もオッケーなルール…

フェニバット(Phenibut)という抗不安サプリメントについて

フェニバット(Phenibut)は抗不安効果を持つとされるGABAに類似した物質で、GABA受容体アゴニストとして作用する。と自分で書いていて訳がわからないが、要するに脳の関門を通りやすく改良されたGABAであり、ベンゾジアゼピンなどの遠い親戚だと思っていいだ…

サイレンが鳴っている

サイレンが鳴っている ここはどこだ? 俺は何をしているんだ? 体が重い 地面が硬い アスファルトか? なんで俺はこんなところで寝ているんだ? ―あの人、大丈夫かしら? サイレンが鳴っている 遠くの方から ゆっくり ゆっくり 近づいてきているのか ―病気?…

郊外のショッピングモールで見つけたもの

今日僕は友達と郊外のショッピングモールへ行った。 僕はあまりショッピングモールが好きではない、お店も物も多すぎるし、あまりにも資本主義的すぎる空気感が苦手で、いつからかあまり行かなくなっていた。 何も買うつもりはなかったのでとりあえずぶらぶ…

知っているぜみんなただの寂しがりやって浅井健一の声が今日もヘッドホンから脳髄に染みるような午前2時に俺は酔っ払っている

俺は酔っ払っている猛烈に強烈に壮絶に猥雑に俺はいつからこんな酒浸りになっちまったんだストロングゼロよお前は俺をどこへ連れて行こうというのかお前は俺をとことんまで破滅させるつもりなんだろう俺は雑草のように強くしぶとく生きるくらいならバラのよ…

忘れちまったよ

俺は何かを忘れちまった 何を忘れちまったのかももう忘れちまった でも何かとんでもなく大事なもんだってのはわかってるんだ ただ思い出せないだけなんだ ただ思い出せないだけなんだ そいつは時々俺の頭の中で鈍く疼く 思い出してくれ 思い出してくれってな…

ひとりぼっちおばけがやってきた!

トントントン!トントントン! れいぎ正しくドアをたたく音でさくらは目をさましました。 ねむい目をこすりながらとけいを見るとまだ夜中の3時です。 「こんなじかんにいったいだれかしら それに、ママとパパはなぜ気付かないのかしら」 さくらはふしぎに思…

ある地球人の感情の記録 #1:嫉妬

「その時の衝撃は、とても言葉で言い表せるようなものではありませんでした。私の耳元で誰かが大きな大鼓を打ち鳴らしたような気分で、最初何が起こったのか全くわかりませんでした。しかし、間違いなく、その時、目の前にはAと、 Mがいたんです。それは間違…

"君"と"僕"

久しぶり、元気にしてた? ちょっと、ぼんやりした顔してないで、そうそう、君の事だよ、やっと気づいてくれた? 僕は君に話してるんだよ、最初からずっとね、 最近ちょっと疲れてるんじゃない? 恋愛の事とか、仕事の事とか、それを取り巻くいろんなごちゃ…

"僕"とは何か

今、僕は文章を書いている。 今、僕が文章を書いている。 今、タイプして、タイプして、一つのリズムを作り上げている。 今、今がただ過ぎていく。 今、僕はそれを見過ごすわけにはいかない。 今、今、今、 今、何か別の事を考えた。 今、また僕が僕でなくな…

君はかつて少女だった

僕はバーテンダーをしている。 賑やかな駅前から少し離れたオフィス街の中にある小さなバーで。 BGMはジャズ、特にこだわりがあるわけではない、オーナーの方針なのだ。 忙しいお店ではないけれど、特別暇なわけでもない。 いろんな人がやって来て、酒を飲み…

不安で目が覚める

ここ数週間、すっきり目が覚めた事がない。起きようと思った時間の3時間くらい前に目が覚める。胃袋を誰かに握りしめられてるみたいなきりきりした感情が深い夢の間からこぼれ出てきて、気がつくと目が覚めている。その感情に不安という名前をつけるのは簡…

晴れの日の不思議

ここのところずっと僕の心の中で澱のように沈殿している暗いムード。癒えることのない過去の傷の痛みとか、どうしようもない虚無感とか、何もやる気が出ない感じとか。部屋も汚れていくばかりだし、読みたい本も読んでない、会いたい友達にも会ってないし、…

何もかも嫌になるときがある

何もかも上手くいかないときがある。 その度に1人で本を読んで、音楽を聴いて、映画を観て、内側の世界を几帳面に作り直して、乗り越えてきた。 それでも時々、プールの水を一気に抜いたような悲しみがやってくる。 わかっている、世界はそういうサイクルで…

秋はセンチメンタル

あんなに元気に鳴いていたセミたちはもういなくなってしまった。燃え盛る太陽の光を浴びて青々と茂った草木や花たちも、もうじき何かの役目を終えたかのように枯れていってしまうだろう。お気に入りのTシャツやサングラスや短パンももう着れなくなる。花火は…

脳内実況タイプ ー幸せについてー

日曜日の昼過ぎ、今日は一日何も予定が無い。特に書きたいことがあるわけでは無いけれどこうしてパタパタとタイプを続けるのは、自分がどこかとつながっている実感がほしいからなのか、単なる自己顕示欲からなのか、承認欲求からなのか。自分の心のありかた…

たまらなく絶望してる君への殴り書き

やぁ、久しぶりだね、こんな風に君と話をするのは。元気だったかい?僕は相変わらずってとこかな、ブロンだって全然やめてないし、死にたくなる日なんてしょっちゅうあるよ。で、今日は何の用かって?いや、特にこれと言って特別な用事があるわけじゃないん…

どろぼう

ある晴れた日の昼下がり 君は突然姿を見せた やあこんにちは 私はどろぼう にっこり笑いそう言った 疑う余地もないほどに 君は確かなどろぼうだった するりと僕の 鍵を開けると 全てを奪い去っていった ねえあのときのどろぼうさん 君は一体どこにいるのか …

夏の終わりの短い夢

僕はピアノの音に耳をすませていた。西日の差し込む部屋に、君がぎこちなく弾くピアノの音が静かに染み渡っていった。僕はソファに横になり、いくつもの音が浮かんでは消えていく様子を頭に思い浮かべた。僕の頭の中で何かざわざわした感触があった。僕は遠…